パラリンピック・パリ大会が日本時間の29日未明に開幕した。日本代表の活躍が期待される競技はたくさんあるが、中でも注目したいのが由良町出身の村上重雄さん(41)=兵庫県=がコーチを務めるブラインドサッカー男子だ。


 ブラインドサッカーという言葉は聞いたことはあったが、先日、村上さんを取材して詳しく学ぶことができた。フィールドプレーヤーは4人でアイマスクを着用し、音の鳴るボールを使って監督やゴール位置を教える「ガイド」の声などを聞きながらプレーする。プレーヤーは視覚障害者だがアイマスクをするのは、光を感じられる人がいるので公平にするためという。ゴールキーパーは健常者(弱視者含む)が務める。動画で日本代表の試合を見たが、アイマスクで視界が完全に遮られているとは思えないような機敏な動きで相手をかわし、全力で走り、ゴールポスト内に的確にシュートする姿には驚かされた。想像の何倍もスピーディーでパワフルだ。


 村上さんは専門学校時代のボランティア活動で、まだ日本に入ってきたばかりのブラインドサッカーに出会い、そこからは選手(キーパー)として活躍するとともに、日本ブラインドサッカー協会の職員として普及活動にも貢献し、指導者としても力を発揮してきた。今回のパラリンピックに向けては初のメダル獲得とともに「誰もが当たり前に混ざり合える共生社会の実現に貢献したい」と思いを述べた。多くの人が日本代表の試合を見れば、村上さんが目指す共生社会にも近づくことができる。ブラインドサッカーにはその可能性が秘められている。真っ暗な視界の中、臆することなく勇敢にフィールドを駆ける選手たちの姿を見て感じた。(城)