2011年8月25日、マリアナ諸島の海上で台風が発生し、9月3日に高知県東部に上陸。紀伊半島に豪雨をもたらし、甚大な被害が発生した。台風の速度が遅かったために雨の降った時間が長く、8月30日から9月5日までの総雨量は県内の広い範囲で1000㍉を超えた。県内の死者は56人、行方不明者5人、重傷者5人、軽傷者3人の計69人。うち、日高地方では日高川町で4人、みなべ町で1人の尊い命が奪われた。

 その紀伊半島大水害から今年で13年。当時の取材を通して見た光景は河川の氾濫、家屋の浸水、土砂崩れによる孤立集落発生などと地域が荒れ果てた姿だった。水道も断水したし、山斜面の地滑りによって畑に建てられていた小屋が遠くまで移動した被害もみられた。土砂で川を堰き止めた土砂ダムも発生し、物心がついた頃から体験した災害の中では一番大きな被害だった。復旧には時間がかかり、自然災害の脅威をまざまざと見せつけられた。

 今、また、非常に強い台風10号が日本列島に接近。「最強に近いクラスの台風」とされ、鹿児島県と宮崎県に暴風、波浪、高潮の特別警報が発表された。すでに九州南部の鹿児島などでは被害が出始め、けが人も出ている。気象庁の発表によると、和歌山県には31日から1日ごろにかけて最接近するとみられ、早めの避難準備が必要。十分に警戒しなければならない。

 日本ではこれまでに幾度となく、台風や地震などの自然災害で大きな被害を受けている。そのたび、「災害の教訓を忘れず、未来に生かさなければならない」と言われ続けてきた。台風10号の脅威に対し、どう行動するのかが問われる。(雄)