千里の浜で産卵するアカウミガメ(みなべ町教育委員会提供)

 西日本有数のアカウミガメの産卵地として知られるみなべ町山内の千里の浜は、今シーズンのウミガメの上陸は68回、産卵は21回で、いずれも1981年の調査開始以降、最も少なかったことが、NPO法人日本ウミガメ協議会(枚方市)と町教育委員会の調べで分かった。海岸の砂の量が減る「浜やせ」、周辺の街灯など光環境の変化が影響しているのではないかとみられている。

 調査は毎年、協議会や町教委、地元の有志らで行っており、今シーズンは6月14日から8月10日までの期間、千里の浜に基地を設置して行われた。

 まとめによると、今シーズンアカウミガメの初上陸が確認されたのは6月3日。初めて産卵が確認されたのは6月10日で、例年より20日ほど遅かった。月ごとの上陸と産卵回数は、6月が上陸31回、産卵7回。7月が上陸34回、産卵13回。8月が上陸3回、産卵1回。8月11日以降は上陸も産卵も確認できなかった。

 産卵回数は約10年周期で増減を繰り返している。2008年から17年にかけては100~200回、18年からは30~60回と推移。近年は台風など気候の影響で砂の量が減ってしまう「浜やせ」の現象が続いており、今は少ない周期に入っているが、その周期が長引くことも懸念されている。
 また、今年は周囲の光の環境にも要因があったのではと調査チームは分析する。上陸調査は千里の浜のほか、北隣にある岩代の浜でも状況を調べており、上陸の割合は例年千里の浜8割、岩代の浜2割だったのが、今年は千里の浜6割、岩代の浜4割と岩代の浜に訪れる割合が増えたという。
 日本ウミガメ協議会事務局の松宮賢佑さんは「ウミガメは暗い場所を好み、少しでも光があると避けてしまいます。千里の浜の周辺では最近、建物や街灯の灯りが発光の強いLEDに替わっているのも見ました。光が千里の浜に漏れやすくなったことで、灯りの影響が少ない岩代の浜に移動していることも考えられます」と話している。

 今年の結果を受け、協議会では、千里の浜がアカウミガメが上陸しづらい環境になっていないか、あらためて精査していきたいとしている。