6月27日の大統領選のテレビ討論会で、民主党の現職バイデン氏がかすれた声で言葉に詰まり、何度も言い間違いを重ね、その衝撃的な映像が全米に不安と失望を与えた。
7月13日、返り咲きを狙う共和党の前職トランプ氏が屋外の集会で狙撃され、銃弾は危うく耳を負傷させただけで事なきを得た。このとき、トランプ氏は警護隊に抱えられ、血を流しながら星条旗をバックに拳を突き上げ、群衆に不屈をアピールした。
そのやらせのような完璧な構図は「ピューリッツァー賞級だ」と絶賛され、共和党の盛り上がりは瞬間最大風速を記録したが、追い込まれたバイデン氏は8日後の21日、選挙戦からの撤退を表明。副大統領ハリス氏を後継者に指名した。
ハリス氏の登場によって、トランプ氏の暗殺未遂後の勢いは完全に相殺され、世論調査ではハリス氏がリードという情報もある。先週末には無所属で立候補を予定していたケネディ氏が撤退、トランプ氏支持を表明したが、共和党は勢いを取り戻すのか。
日本ではおそらくわが国の次のリーダーとなる自民党の総裁選びのニュースが繰り返し報道されている。誰が出馬を決意したか、推薦人の集まり具合は? 夜はどの大物とどこの店で食事をしたか、出馬表明の会見はどこでどんなスタイルでやるのか…。
追いかける報道陣、追いかけられる政治家のどちらもお祭り気分の印象だが、マスコミのいう(投票権のない)国民が選ぶ次の総理ランキングの上位常連が選ばれるとは限らない。
パリ五輪の柔道ではないが、総裁選には不可解な力が複雑に作用する。誰に決まるにしろ、その先の衆院選勝利には議論の深化と結束、公平な報道が欠かせない。 (静)