暖冬になると梅の開花が早まり、めしべの状態が未発達のままになる。受粉を担うミツバチの活動も活発化しないため、結実しにくくなる。今年の南高梅の着果状況は平年の3割ほどで、ベテラン農家からも「実がなっている樹が見つけられない」「今年は今までに経験したことのない大不作」との声が聞かれた。2020年も暖冬による不作で、今後も暖冬の年が多発するのではと懸念されている。
そんな中、暖冬でも平年通りに着果した樹もみられた。協議会はこれを優良樹の候補とし、今年5~6月にかけて農家に情報提供を呼びかけた。現在、約30個体の情報が寄せられており、病気の耐性や遺伝子的に優れているか調査を行っている。
優良樹の苗木を育成し、普及するまでには約15年かかるという。今後は苗木業者と連携しながら、優良樹の候補からいくつか穂木を採取、約2年かけて育成する。その後、暖冬を再現した状況で実を着けさせ、不完全花率や着果率を相対的に評価し、約3年かけて1次選抜を実施。クリアした苗木は実際にほ場に植え、樹の生長の勢いや収量、果実品質などを調べ、約4年かけて2次選抜を実施する。優良樹の苗木が農家に普及するのは2038年ごろになる。
研究を行う県うめ研究所の担当職員は「不作の年が続けば農家の収入も不安定になる。この取り組みで県の主力品種である南高梅の安定生産につなげ、農家の所得安定にもつなげたい」と話している。