207の国と地域が参加し、連日好勝負が繰り広げられているパリ・オリンピック。日本勢のメダルラッシュなど毎日テレビで観戦しているが、最も強く印象に残っているのは、日本時間7月27日午前2時半から観賞した開会式だった◆セーヌ川を選手団が船で行進するという、今までにない形。リオ大会から結成されている難民選手団、国旗を背負えないロシアとベラルーシ。船上の選手団を見、各国の説明を聞くだけでも世界の「今」が垣間見える。一部の演出がその後物議を醸したが、工夫を凝らしてフランスの歴史も紹介。思わず「はっ」と座り直したのは、大好きな歌が流れた時だった。ミュージカル「レ・ミゼラブル」の劇中歌「民衆の歌」である◆日高地方の合唱団体の公演を取材してこの曲が印象に残り、いろんな動画を試聴してさらに好きになった。「民衆の歌が聞こえるか」という力強い歌い出しのこの曲は、1832年の七月王政打破のため蜂起したパリ市民が政府軍と衝突する場面でうたわれる◆人類の歴史は戦争の歴史でもあり、また革命の歴史でもある。よりよい社会の到来を夢みて、人は戦いを繰り返す。武力ではなく英知でそうした戦いを繰り広げ、よりよい方向へと世界を動かせたら、どんなに素晴らしいことか◆今回が3度目の参加となる難民選手団は、戦争や迫害などから逃れるため難民となった人々に五輪参加の道を開こうと結成された。今回、そのメンバーが初めてメダルを獲得。女子ボクシング、カメルーン出身の選手である◆時代が進んでも未だなくならない戦争など理不尽な現実と戦う人々に、世界が目を向ける。五輪はその貴重な機会となる。過酷な現実と向き合うすべての人の戦いに、「民衆の歌」が重なる。(里)


