御坊市の日高港が税関検査場所の確保など一定の条件をクリアすれば、外国貿易船が同港に直接入港できるよう、県と国の関係機関との協議で合意を得たことは既報の通り。県は来年秋までに必要な整備を進め、運用を目指す。

 日高港は現在、関税法上の「開港」にはなっていないため、外国貿易船が入港するためには税関がある和歌山下津港などを経由する必要がある。港では木質バイオマス発電所の建設工事が進められ、来年9月に運転開始。燃料は外国から年間約20万㌧の輸入を予定しているため、外国船が直接入港できるようになれば、貿易がスムーズに進む。また、市内には港を含め、いまのところ大きな企業誘致をすぐに受け入れられる工業団地などはほぼ埋まってしまったが、高速道路が近く、海外の貿易船が直接入港できる港があることは、今後の企業誘致の大きな武器になると期待される。

 今回、注目すべき点は開港していない港の公共岸壁で、貿易船が直接入港できる運用は全国的に例がないということ。本来、県や御坊市、市議会は国に対して、日高港を開港して貿易船を直接入港できるよう要望していたが、県と国との協議の場で、現時点での取り扱い貨物量では開港が難しいと判断した。そこで話が終わるのではなく、開港と同等の機能を果たせる運用方法を特例で認めることになった。

 港を軸に地域振興を目指す地元の熱い思いや、要望を受けた衆議院議員の二階俊博さんらの働きかけが、不開港での貿易船入港という新たな道を切り開いた形。政治資金問題など近年、政治への不信感が募る一方だが、これもまた政治の力のなせる業だと言える。(吉)