「山での遭難と災害時の被災者の極限状態は同じ」と話す野口氏

 御坊市制施行70周年記念事業「ごぼう防災ゼミ」が14日、市民文化会館で開かれ、延べ1000人が来場。講師にアルピニストで災害復興支援に取り組んでいる野口健氏(50)を迎えて、「災害を生き抜くために~テント村という選択肢~」をテーマに聴いた。野口氏は山での遭難と同じく、心身ともに極限状態に追い込まれる災害時にこそ、「ホッとできる癒やしの空間が必要」と話した。

 モンブランやキリマンジャロ、エベレストの登頂に成功した野口氏は、山にこもる2カ月の間に発狂して山から飛び降りる人もいるなど、登山の時には心身ともに守れる環境が必要だとし、それがベースキャンプにあるテント村だと説明した。

 2016年の熊本地震の被災地支援では登山の時のようなイメージでテント村を再現。テントは簡単に設営できて雨風が防げ、プライバシーも保護でき、もし余震で天井が崩れてもけがをすることがないなどの利点を紹介した。また、たばこやワインの救援物資が不謹慎だと言われることもあるが、被災者から大変喜ばれたとし、「厳しい状況をちょっと忘れる時間も必要ではないか」とした。

 今年1月の能登半島地震の際にもテントの支援を行おうとしたが、石川県の受け入れ態勢の問題でテントが届くまでに時間がかかったこともあり、もしもの場合に備えて事前に自治体がテントや寝袋を準備し、設営場所を決めておく必要があると指摘。災害時のテント生活にも慣れておくよう、日ごろから自然体験をしておくべきだとし、「プチピンチを経験しておけば生命力が生まれる。家族や学校で自然体験を取り入れてほしい」と呼びかけた。