県立医科大は10日、肺扁平上皮がんに、本来はがん抑制物質であるp53が多くくっついた凝集体が与える影響を調べた結果、抗がん剤が効きにくくなるなどの悪影響を与えていることを突き止めたと発表した。同大生化学講座の西辻和親准教授らの研究チームが明らかにした。凝集体を除去することで効果を高められるとみられ、有効な治療法確立につながると期待されている。
西辻准教授が同日、「肺扁平上皮がんの新たな予後因子を発見」をテーマに会見した。
p53は、一つひとつの細胞の中でDNA修復などの働きをするとされるがん抑制遺伝子の一つ。20年ほど前には凝集体をつくることが分かっていたが、凝集体になった場合は細胞等にいい影響、悪い影響のどちらを与えているのかの研究が行われておらず、興味を持っていた西辻准教授が5年ほど前から他の大学教授らと共同で研究。特に凝集体がよくみられる肺扁平上皮がん患者でデータを収集、分析した。
肺扁平上皮がんは喫煙と大きく関係しているといわれ、煙が入り込む肺上部の入り口付近にできることが多く、肺がんの25~30%を占めている。研究では、p53凝集体とがん細胞増殖との関連性、抗がん剤の効果との関連性を調査した。結果、凝集体が観察される肺扁平上皮がんの症例は予後不良(治療後の経過がよくない)であることが判明。抗がん剤が効果を発揮していないと考え、凝集体を除去したあとに抗がん剤を与えると、再び効果が発揮されることも分かったという。
会見した西辻准教授は「p53凝集体ががん細胞の異常な増殖、抗がん剤の効果に関わっていることが分かった。将来的にはがん細胞内のp53凝集体を標的にした抗がん剤の開発につながる可能性がある。凝集体の有効な除去方法などを引き続き研究していきたい」と話した。