小学校での体験学習を取材する機会が多く、先日は、御坊市の野口小学校で御坊市更生保護女性会の訪問茶道教室を取材。子どもたちが初めての茶道体験を楽しみ、「お茶は苦いけどお菓子はおいしい」と笑顔を見せていた。この時のお菓子はぶどうのゼリー菓子。紫色と緑色の2種類があり、折りから街で咲いているアジサイの花と葉を思わせた。季節を感じさせるのは、日本の菓子の重要な要素である◆今月16日は「和菓子の日」だった。今から1176年も前の嘉祥元年(848)、国内に疫病が蔓延した時、6月16日に神前に16個の菓子を供え、疫病除けと健康招福を祈ったのが始まりという。それがさまざまに形を変えながら江戸時代にまで継続。江戸幕府ではこの日を「嘉祥の日」とし、お目見え以上の身分の者に大広間で菓子が与えられた。1000年近くも連綿と続いたのは、健康を祈る大義名分があったほか、皆でそろって甘い菓子を食べることの心楽しさ故だろう◆初夏から夏にかけての和菓子には「若鮎」がある。カステラ生地で求肥をくるんだ菓子で、筆者は子どもの時からこれが大好きだった。店によって少しずつ形や味が違うのもまた楽しかった。そのほか6月30日の「夏越の祓」に食べる「水無月」。氷をかたどった半透明のういろう菓子で、小豆餡がのせられている。小豆の赤い色が厄を払うと信じられていた◆味覚の好みの幅が広がった現代でも、季節のイベント的な側面の強い和菓子には、体験を共有できる心楽しさ、歴史的な意味合いの奥深さという付加価値がある。生活に彩りをプラスすることにもつながる和菓子。しっかりと味わいながら未来へ受け継いでいきたいと思う。(里)