近畿の梅雨入りは平年より遅いようだが、雨季に植物の名をつけているのは日本ならでは。「つゆ」の音は、物が濡れている様子を「露けし」といったことから来ているという説と、物がくさりやすくなることから「潰(つい)える」を語源とするという説があるらしい◆憂鬱になりがちなこの季節にも、そんな気持ちを吹き飛ばし浮き立たせてくれるものがある。アジサイや花ショウブなど、この時期に咲く花だ。御坊市の「とびやま花しょうぶ園」を取材して、花自体の美しさとともに感動すら覚えたのは、その品種が驚くほど豊富なことと名前の風情だった◆同園には実に90種類があり、純白の「雪豹」、きれいな青紫の「碧鳳」、白地に古代紫の条が美しく入った「浜風」、淡い水色の「水の都」、澄んだ黄色の「堺の黄金」など、名を知ってから花を眺めると一層味わい深く感じられる。「鶴ヶ城」や「業平」、斎藤道三の愛妾と同じ「深芳野(みよしの)」など歴史好きの心をくすぐる名前もあった。アジサイもまた実にさまざまな品種がある。かわいらしい「てまりてまり」、風情のある「恋物語」や「歌合せ」、カラフルさを感じさせる「マジカルレインボー」など名をきくだけでも心楽しい◆雨に閉ざされた街は無彩色に見えるが、そんな中に美しい名を持つ彩り豊かな花々がしっとりと咲く。憂鬱な梅雨も心次第で楽しく過ごせると、教えてくれているようだ。(里)