5月のテーマは「旅」。人気女性エッセイストが、国内外の旅の体験をつづった一冊をご紹介します。

 「家もいいけど旅も好き」(岸本葉子著、講談社文庫)

 「家にいるのが何より好き」という著書もありながら、旅好きでもあるという若者が、本書では身近な高尾山登山から岩手県の平泉金色堂、ドラマチックなベトナム旅行など多彩な旅について親しみやすい語り口調で紹介しています。

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 寄り道してしまったが、いよいよ金色堂へ。やや? コンクリートの建物とは。「あれは覆堂。保護のため、かぶせてあるんです」と地元の人。浄めの水で手と口を清浄にして、中へ入ると。

 おお、本当に金色だ。「金」というのはものの喩えと思い、まさか、こうまで金色とは想像していなかった。(略)「凸」の字をこちらへ倒した形の台座の上に、仏様ご一行が並んでいて、隊列をなし、しずしずと、こちらへ向かって進み出てくるところである。その仏様も、むろん金。(略)確かに、「ははー」と思わず拝んでしまうのも、わかる。何といってもビジュアルが圧倒的だ。極楽の光を表すように、燦然と輝いているのである。(「浄土のテーマパーク 岩手県・平泉」)