県内の障害者支援施設で働く女性職員が利用者を虐待していたとして、施設を運営する県福祉事業団の関係者が会見で謝罪した。職員個人の問題はもちろん、過去の高齢者や児童福祉の施設における事件も含め、労働の実態、人間関係、待遇など国を挙げて議論しなければならない。

 話は少しずれるが、SNSも投稿者の意に反して画像や動画が問題視されることがある。先日もテレビで、女性が節分に家で豆まきをした際、鬼の面をつけた夫とそれを見て泣き叫ぶわが子の動画をアップしたところ、管理会社が虐待に当たると判断して一方的に削除したという話をしていた。

 日本では、赤ちゃんの泣き声は邪気を祓うという信仰があり、1歳ぐらいの子ども同士が土俵で先に泣いたり、大きな声で泣いた方が勝ちという「泣き相撲」が各地で行われているが、これも同じか。

 さらにいえば、元プロレスラーのタイガー・ジェット・シンはどうか。リング外で暴れ狂い、ときには逃げる客も投げ飛ばし、昭和の子どもには最強のヒール(悪役)として、強烈な恐怖を植えつけた。

 それでもファンは怖さの裏のやさしさを知っていた。客席で暴れながらも女性や高齢者を的確に避け、サーベルで猪木やブッチャーを血祭りにあげるときも、切先や刃ではなくなぜかグリップで殴るお約束。その愛情に満ちた凶暴さ、実生活の被災地支援やスポーツを通じた国際交流活動の功績が認められ、先日、春の叙勲を受章したことは本当にうれしかった。

 暴力や性的加害は論外だが、節分やなまはげの鬼は子どもを怖がらせても、危害を加えるわけではない。日常、不意に訪れる危険を知り、恐怖に立ち向かう勇気と強さを育む意義があるのでは。(静)