最近流行りの「猫ミーム」をご存じだろうか。SNSでバズった猫の画像・動画を素材に、投稿者がストーリーを作って発信する動画だ。

 ミーム(meme)は英語で「情報や文化が模倣によって伝わっていく」という意味合いがあるそうだ。今や動画は誰でも作れる時代になった。YouTubeやツイッター(現X)を覗くと、猫ミームの動画がいくらでも出てくる。

 猫の素材は、チピチピチャパチャパというノリノリの音楽に合わせて前後に動く猫や、耳を後ろに逆立てて怒っている猫、申し訳なさそうな顔で弱々しくニャオ…と鳴く猫、飼い主に操られてダンスさせられる猫などさまざま。フリー素材で切り取ることができ、ストーリーに合ったものを組み合わせて作っていく。

 ストーリーの内容もいろいろで、日常の幸せを感じる話やほっこりしたエピソードなどは、猫ちゃんの動きも相まって楽しい。だが「超絶ブラック企業に入社し精神を病んだ話」や「小4で家族が離散した話」など、かなり重い内容のものもある。投稿者は自身が経験した暗い話をかわいい猫ちゃんを使って中和させ、面白おかしく見てくれたらという感じで自虐的に語っている。しかし、見ている方は内容の重さに「いやいやいやー」とツッコミを入れたくなるが、ついつい感情移入してしまう。結局動画の再生数が多いのは、こういった重い内容の話だったりする。

 そう考えると、今まで打ち明けづらかったことを猫ミームという形で、しかも匿名で発信できるようになったのはいいことなのかもしれない。コメント欄で動画を見た人からいろんな意見ももらえるので、それによって投稿者が抱えていた気持ちが少しは晴れたりするだろう。(鞘)