今月31日、御坊市民文化会館大ホールで同会館自主事業のオペラ「森は生きている」が上演される。子どもの時によくNHK教育の人形劇「おとぎのへや」を見ており、その中にこのロシアの物語があったが、途中までしか見なかったらしく女の子が森に行く前半だけを覚えている◆原作者はサムイル・マルシャーク、1887年、ヴォロネジ生まれ。ロシアの西の端、ウクライナとの国境に接する町だ。マルシャークは30歳頃に難民の子どもたちと働く経験を持ち、児童向けの劇場や工房から成る「チルドレンズ・タウン」をつくって劇場向けに精力的に戯曲を執筆。子ども向けの詩も数多く書いた。「森は生きている」は43年、第2次世界大戦中の作である。64年、76歳で他界◆今回のオペラには地元の御坊少年少女合唱団、日高高・附属中合唱部の児童生徒も出演。この企画は4年以上前からあり、コロナで延期を余儀なくされていたという。演出家の大石哲史さんが御坊で子どもたちに指導を行う様子を取材させていただいたが、劇中の「もえろもえろ」「ソリの歌」の躍動感は素晴らしい。振り付けはその場でどんどん新しく生まれ、子どもたちがすぐさまものにしていく様子には見とれた。「もえろもえろ」の作詞は原作者のマルシャークである◆2022年2月24日以降、ロシア現政権の所業は世界から非難を浴びているが、ロシア文化が否定されているわけではない。芸術を通して他の国を知ると、悲惨なニュースからだけではわからなかったことが見えてくる◆チケットは同会館で販売中。筆者も数十年ぶりに話の続きを見て、躍動的なクライマックスを鑑賞するのを楽しみにしている。(里)