米国、旧ソ連、中国、インドに続き、日本のJAXAの探査機SLIMが月面着陸に成功した。先行の4カ国はいずれも目標地点に対して数㌔から数十㌔離れた場所への着陸だったが、今回のSLIMはわずか55㍍の誤差だった。
世界で初めて人類が月面に降り立ったアポロ11号から55年。いま再び月面着陸を目指す宇宙開発競争が過熱している。その理由は月にあるとみられる氷を発見するためで、氷が見つかれば月が人類第二の生活圏となり、新たなビジネスの可能性が高まる。
宇宙開発に参入する民間企業は、月を拠点に新たなビジネスを考えている。イーロン・マスク氏のスペースX社は火星が地球の植民地となることを想定し、地球と火星の間の輸送システム構築を最終目標としているという。
地球から火星までは最も近い軌道で約5500万㌔。地球から月まで(約38万㌔)の145倍ほどあり、現在の技術では片道約250日(8カ月)かかる。人類を送り込むには、長期の隔離生活に耐えられる肉体と精神をいかに維持するかが最大の課題となる。
地球を出発して火星に到達し、基地内外で任務を遂行して地球に帰還するまで数年間、クルーは同じメンバーとプライバシーのない空間で過ごす。NASAがハワイの山で実施した1年間の隔離実験では、当初良好だったクルーのムードは徐々に壊れ、半年後には誰もがほとんど口をきかなくなってしまった。
互いに相手を思いやる言動がいつしかストレスに変わり、やがて姿が目に入るのも耐えられないほどの苦痛となるが、逆に監視を気にせず、恋愛など好き勝手な行動をすることで良好なムードが戻った。宇宙飛行士とは思いのほか、いやなやつなのかも。(静)