先月29日、本社の津村尚志代表取締役会長が82歳で鬼籍に入られた。以前、筆者が市政担当をしていた時には、御坊商工会議所関係の取材や懇親会にご一緒させていただく機会があった。

 とにかく本人が自慢のように言っていたのは「年間365日、自宅で夕ご飯を食べるのは正月のみ」。しかも1軒目で晩酌して終わりではなく、2軒、3軒はしごは当たり前。「このバイタリティーがないと会社のトップは務まらないのだろう」と、当時は素直に感心。はしごをしても酒に飲まれるようなことはなく、慶応ボーイらしいウィットに富んだジョークを飛ばし、大先輩に失礼かもしれないが、屈託のない笑顔を浮かべていたのを思い出す。

 それにしても、御坊のお偉い方は酒をうまく楽しみ、カラオケをうたうのが好きな人が多い。そんな場では酒の魅力と言ってもいいだろう、いつも以上に本音で語り合え、ある種の信頼、連帯感が生まれることがある。もちろん津村会長は酒の場だけでなく、ライオンズや日高高校同窓会などでの献身的な活動を行っており、そうやって生涯にわたり積み上げてきた人脈が、会社の発展や、さまざまな人を巻き込んだ宮子姫里づくりなどの動きにつながったと言える。

 津村会長が社長時代に、「吉本君、毎日毎日ただ記事を書いているだけではダメだよ」と言われた。取材と原稿出しに追われる日々、「これ以上、まだ仕事をしろと…」と内心腹が立った。しかし、もはや真意を確かめるすべはないが、「会社の発展、そして日高地方の発展のために何をなすべきか考えろ」という叱咤激励だったのだと思う。大きな夢を抱き、前進を続けた会長の不撓不屈の精神を見習いたい。(吉)