5、6日と関東地方では大雪警報が発令された。その日の夜のニュースでは、積雪の影響で交通機関がマヒして帰宅ラッシュを直撃したという映像が次々と流れていた。印象的だったのは、モノレールが進まなくなり、やむなく下車して線路の上をヒールで歩く女性の姿。数センチの積雪で都市機能が脆くもマヒしてしまう様子に、あらためてまちの利便性と生活のしやすさは違うものなんだと感じさせられた。

 だが、東京一極集中の傾向は変わらない。総務省が先月30日に発表した人口移動報告によると、31道府県で人の流出が前の年より拡大し、首都圏が12万6515人の転入超過となった。コロナ禍ではリモートワークの普及で、地方回帰の動きがフィーチャーされていたが、コロナが明け、間も置かずに、若者を中心に東京への転入が増えている。

 ある動画で、若者はなぜ地元を離れて東京へ行くのかという論議を取り上げているのを見た。「自分のしたいことが田舎では限られている」「仕事のスキルや人間関係を充実するチャンスが東京には多い」などの理由があり、中には「年功序列、男尊女卑の古い価値観が耐えられない」というのも一定数いた。特に女性に多く、ある女性は地方で働いていた時、男性の上司からコピーやお茶を淹れてと雑用ばかり頼まれ、「男性と同じ仕事をしているのに」とモヤモヤして東京へ出ていったという。特に若い女性が東京に流出する傾向が顕著で、それが未婚化、地方の少子化につながっているのではという指摘もある。

 モノレールの線路を歩かされた女性も、田舎で心が窮屈になるより、一時の利便性が脅かされるほうがマシと思って東京へ行った一人かもしれない。田舎もそろそろ〝アップデート〟を求められている。(鞘)