2024年、甲辰(きのえ・たつ)の年が始まった。しかし、このような年明けになるとは誰が考えただろうか。1月1日午後4時10分頃、石川県沖を震源とする最大震度7の地震が発生した◆テレビ全局で避難への切迫した呼びかけが続き、やがて視聴者の提供映像等が放映。揺れの激しさが臨場感を持って伝えられ、息をのんだ。CMを挟むことなく報道は継続し、輪島、能登では火災が発生。否応なく東日本大震災発生時を想起させられた◆当初は人命に関する被害の情報は少なく、翌日にはテレビ番組の編成は通常に戻ったが、第100回記念箱根駅伝の放送時、画面上部に石川県内の死者23人とテロップが流れ、粛然たる思いに居住まいを正した。3日午後6時現在、石川県内で亡くなった方は73人という。いたましさに言葉もない◆これまで何度か石川県を訪れた。ゼミの研修旅行で金沢へ、サークルの合宿で羽咋へ。そして七尾市と輪島市には友人と旅行。和倉温泉に宿泊して輪島朝市に出かけた。幼稚園の時使っていた弁当箱に似た、椿が描かれたかわいらしい輪島塗の小箱に心惹かれ購入。見るたび朝市の和やかな賑わいを思い出した◆1日夜の火災で、輪島朝市では商店・住宅200棟が全焼。ニュースで映るその場所に記憶の朝市の面影を見ることはできず、ただぼうぜんとした◆2日夜には、救援に向かうはずの海上保安庁機と旅客機の衝突というあまりに悲しい事故が起こった。旅客機の乗客乗員は全員が迅速な脱出を果たしたが、海上保安庁機は6人中5人が犠牲となった◆信じ難いほどの理不尽な事態にも人は耐え、何らかの方策を講じ、今後のためにも検証しながら乗り越えなければならない。それを思い知らされる、重い年始めとなった。(里)