12月のテーマは、先ごろ他界した脚本家、山田太一氏。トレンディドラマ全盛期の90年代初頭、月刊「ドラマ」誌が山田太一特集を組みました。

 「テレビドラマへの疑問」(月刊「ドラマ」90年11月号所収、山田太一氏インタビュー)

 小説「異人たちとの夏」、映画「少年時代」監督などテレビドラマから離れていた時期の山田氏に、テレビドラマについて問う内容のインタビュー。現代社会への示唆にも富む内容です。

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 最近、国木田独歩を読んだんですが、日露戦争が始まった頃、国中に危機感があったというんですね。白人と初めて戦うわけですから。国民は、道を歩いていると、知らない人にでも声をかけ合うくらいに、オクターブが高かったというんです。一種の興奮状態で。そして日露戦争で勝ってしまった。すると、ものすごい虚脱感がきたというんです。喪失感というんですか。またばらばらの他人に戻っちゃったという、それを埋めようもない。今の日本は、その他人に戻っちゃったような状態がずっと続いている。(略)また、濃密な関わり方は信じられないというかそういう機会も少ない。そういう時にドラマを書くっていうのは、とても難しいですね。