金がないからいい選手を獲れない、いい選手がいないから勝てない、勝てないから人気が出ない、人気が出ないから儲からない。12球団の日本のプロ野球はまだしも、30球団がひしめくMLBはチームの資金力の差がそのまま成績に表れる。

 12年前に公開された映画「マネー・ボール」は、チームを強くするため、日々、ドラフト候補の発掘、他球団選手のスカウティング、戦力外と判断した自軍選手とのトレード交渉に奔走するGMやスカウトの奮闘を描く。

 ブラッド・ピット演じる主人公は、年俸総額がヤンキースの3分の1(2002年度)という貧乏球団アスレチックスのGM。「金がねえから仕事にならねえ」と嘆く老スカウトと対立しながら、徹底したデータ分析の導入でチーム改革を進める。

 ▽勝利に必要なのは何より出塁率▽安打と四球は同価値▽アウトのリスクが大きい盗塁、アウトを増やす犠打はするな――など、剛速球や長打に頼らずとも、安い選手ばかりで勝てることを証明する。

 わが栄光の阪神タイガースも四球の査定を高くした結果、今季はチームでリーグ最多494個の四球を選び、リーグ1位の出塁率を記録。本塁打は5位の84本、1位の巨人の半分以下ながら、得点は555点でリーグ1位となった。

 一流になればなるほど、自分を高く買ってくれる球団に流れるのはプロとして当然。金持ち球団はいい選手が多く、貧乏球団はいい選手をどんどん引き抜かれてしまうが、球団とファンへの恩義から、金では動かないという侍もかっこいい。

 大谷翔平がついにドジャースへの移籍を決断した。一選手として、ベースボールの常識を覆した男は来季、新天地でどんな伝説を見せてくれるか。(静)