小牧長久手の激闘、秀吉の死など物語は佳境を迎え、いよいよ天下分け目の関ケ原へ。大河ドラマ「どうする家康」の完走も目前となった。
高齢化が進む編集部には歴史が得意な記者もいて、大河ファン同士、ドラマの話で盛り上がりたいのだが、悲しいかな、聞く方も答える方も武将の名前が出てこない。たとえば、松山ケンイチ演じる徳川家臣の本多正信についてはこんな調子。
「家康の子分のあいつ、名前なんやったかいな」「本多忠勝」「いや、そっちやなくて、もう1人の」「もう1人?」「ほら、あいつのダンナの…」「あいつて誰よ」「昔、ハイボールのCMに出てた」「井川遥?」「違う」「菅野美穂?」「もっと前」「もしかして、小雪?」「そうそう!」。
劇中の人物の名前(本多正信)が出てこず、演じる役者の名前を言いたいのだが、頭の中に顔が浮かんでいるのに名前が出ない。さらにそれを引き出すキーワードとして、妻である女優の名前を言いたいが、これまた同様に名前が出てこず、話はどんどん本筋から遠ざかる。
このところはいつもこんな感じで、年齢とともに記憶力が低下するのは仕方がないとはいえ情けない。しかし考えてみれば、時間とともに記憶が薄れるというのは当たり前の話であって、一度見聞きしたことをすべて、いつまでも覚えている方が異常で怖い。
記憶を頭に定着させるには、ざるで水をすくい続けるような繰り返しの努力が必要。一方の忘却は新たな情報をインプットするための脳内のキャパシティ確保に必要な現象であって、勤勉な日本人はこれをネガティブにとらえすぎのような気もするが、皆さまも結婚記念日と家族の誕生日だけはお忘れなきよう。 (静)