日高川町で行われた県立医大や医薬品卸会社、通信大手などの共同プロジェクトであるドローンを使った医薬品配送実証実験を初めて取材した。両翼合わせて1㍍ほどの飛行機のような機体のドローンは時速100㌔が可能で、入野地区から美山地区まで山の上を21㌔㍍自動飛行し、約19分で目的地に到着した。同時に出発した車は40分余かかっており、最短距離を高速で飛べるドローンのメリットが今後の可能性を示した結果となった。すべてオートメーション化されており、ドローンをその場に運べば東京からでも離発着できる点も大きい。

 2011年9月の台風12号による紀伊半島大水害は、記者になって26年間の中でも最も大きな出来事といっても過言ではない。住宅の浸水や流出、道路の冠水は夕方までひかず、今回のドローンの着陸地点周辺にたどりついたのは日が暮れ始めたころだった。その後も連日日高川町に取材に入ったが、車で行ける場所には限界があった。今後、どんな災害が起こるか分からない。ドローンでの配送が社会実装されれば大きな威力が発揮されるだろうと感じた。

 実証実験に参加した関係者によると、まだまだ実装には課題が多いという。ドローンのレベル4(有人地帯の目視外飛行)飛行は国内では昨年12月に解禁されたばかり。認証されているドローンもまだ1種類にとどまっているのが現状。それでも大きな一歩であることは間違いない。将来、薬だけでなく、支援物資やもっと大きな物も運べる日がくるだろう。ドローンがいざというときの切り札ではなく、人々の生活を支えるインフラになることを期待せずにはいられない。(片)