アリスのリーダーであり、ソロとして「昴」等の名曲を残した歌手の谷村新司さんの逝去が報じられて1週間。追悼番組を幾つか視聴し、アリスの結成秘話が書かれた中学時代の愛読書「帰らざる日々」を読み返した◆小学校の時には人気番組「ザ・ベストテン」で「ジョニーの子守唄」「チャンピオン」がランクイン。ラジオで好きな曲を録ることを覚えた中学校の時は「冬の稲妻」「遠くで汽笛を聞きながら」等録音した。ツインボーカルのきれいなハーモニー、力強いドラムに支えられた骨太のサウンド、歌詞に展開される独自の世界。他のいろんなバンドと全く似ていないところが魅力だった。そして1981年、筆者が中3の年に活動停止。長い期間を経て3回活動が再開され、3人が70歳になった2019年、本格的に再始動した◆「帰らざる日々」は3人の語りで構成。事務所が巨額の借金を背負い、返すために殺人的なスケジュールで全国を駆け回った数年のこと等が克明につづられる。3人で疾走したその日々の描写はしかし、辛さよりもむしろ、熱くまぶしく、青春記といっていいきらめきに満ちていた◆アリスを離れても大きな仕事を成し、かかわった多くの人々の口からいろんな面の素顔が語られた。谷村さんを悼む堀内孝雄さんを、テレビで見た。在りし日を回想して「あの、いい笑顔でね」と言った途端に涙があふれ落ち、ハンカチを目に当てる姿が印象に残った◆そしてまた、「ダンシング・オールナイト」のもんだよしのりさんの逝去も報じられた。中高生時代に親しんだ音楽や物語のつくり手の訃報に接することが多くなったが、作品から受けた感動が消えることはない。何度となく思い返す記憶は、無数の星のように胸中でさんざめいている。(里)