10月に入り、日高川は落ちアユ漁のシーズン。秋の風物詩の「ハメ漁」がピークを迎えた。産卵のため川を下る落ちアユを網で狙う伝統漁法。川幅いっぱいに約1㍍間隔で竹の杭を打ち込み、杭に沿ってわらを取り付けたロープを張る。アユが障害物となる「ハメ」の前で集まる習性を利用し、そこに長さ約10㍍の小鷹網(こたかあみ)を投げて捕まえる漁法。
先日、日高川支流の寒川で、ハメ漁を行っている地元の大橋晴次郎さん(91)を取材した。高齢になっても足腰が達者で、胴長をはいて川に入り、機敏に動いて落ちアユを狙う。河原に通じるはしごを降りる時も同行させていただいた筆者に「気をつけて。落ちんようにな」と気遣ってくれた。川とは昔から関わり、「子どもの頃から川が好きだったんですよ」と笑顔を見せる。ところが、「今年はアユの数が少なく、漁がさっぱり」という。
全国的に年々アユが減少傾向で、インターネットで減少の要因を調べると、ダムの建設、水質汚濁などによる河川の荒廃、乱獲などの理由だという。近年では細菌が感染する冷水病による大量死も指摘されている。確かに筆者の実家近くを流れている切目川も以前は天然遡上のアユがたくさん見られたが、最近はずいぶんと減少した。アユに限らず、ウナギなども少なくなっている。
以前は夏になると、一日中、川で遊ぶ「川ガキ」がいた。川に魅了された子どもたちだ。ところが、最近ではその姿を見かけることは少ない。川に魅力がなくなったのだろう。川ガキは川の豊かさのバロメーター。たくさんの魚が棲む豊かな川を次の世代に引き継ぐことが課題だ。(雄)