少々日が経ってしまったが、御坊市で9月に開かれた2023年度第2回市民教養講座について、当日の記事で書ききれなかった内容をここで紹介したい。講師は放送作家の野々村友紀子さん。「強く生きるためのヒント」をテーマに語った◆「嫌われない人より好かれる人でいろ」「口角下げるな、頭下げろ」「誰も助けてくれないという前に助けてと叫べ」など、どの年代にも刺さる言葉が次々に紹介されたが、個人的に一番印象に残ったのは「『行ってらっしゃい』と『お帰り』が世の中を楽しくする」だった◆夫婦げんかをする。互いに口も利きたくなくなる。出かけるのも黙って、ドアをバタン!と閉めて出ていく。そんな時でも「行ってらっしゃい」、帰ってきたら「お帰り」の言葉は必ずかける。「不機嫌なまま出かけて、電車にバーン!と乱暴に乗って、誰かにぶつかってその人を不愉快にさせて、そこから何か事件が起きないとも限らない」。負の感情の連鎖の恐ろしさ。それは確かに、些細なことで重大な事件が引き起こされる報道を見ても分かる。心のささくれがひび割れとなり血が出ないうちに、言葉の軟膏を塗っておく。ささやかなようで大事なケアである◆言葉で治らない各自のストレスのとりあえずの対処法も、講演では示された。「考えるな、寝ろ」。解決策のすぐに見つからないことをいくら考え詰めても状況は変わらない。それより、考えるのをやめて寝る。目覚めると、とりあえず心の状態は寝る前よりよくなっている◆テレビでおなじみの野々村さんは「ユーモアある毒舌で人気」とされる。物事の本質を衝いた人生訓がタンタンと小気味よいテンポで語られる、その口調はある意味刺激的だが、毒ではなく薬として作用するようだ。(里)