コーヒーは主に赤道を中心に南北25度以内の熱帯や亜熱帯地方で生産され、冬場の気温が低下する日本での栽培はほとんどなく、亜熱帯に位置する沖縄や小笠原などでつくられている程度。生産量は多くなく、需要の99%をブラジルやベトナムなどからの輸入に頼っているのが現状だ▼ところが、日高川町で大阪府柏原市から移住した道仙信也さん(38)=川原河=がコーヒー栽培の挑戦を始めた。冬の気温はもちろん10度を下回り、栽培は極めて難しい。しかし、岡山県の業者が改良した寒さに強い苗を使用することで低気温でも可能となり、栽培のめどが立ったという。来月から借りた畑の整地を始め、年明けには50本の苗を植栽。来年11月ごろの初収穫を目指す▼道仙さんの目標は将来的に地域の特産にすることだ。今後、安定生産が可能になれば、国内コーヒーの産地として売り出すことができる。そうなれば、担い手不足、休耕地の増加など農業を取り巻く問題点の解決につなげられる可能性もある▼国内のコーヒーの消費量は、コンビニなどでレギュラーコーヒーのおいしさが身近になったことや健康効果が明らかになったことなどで増加傾向。加えて中国や東南アジアでコーヒーの需要が拡大し、価格も高騰しているという。しかし、食品として農薬使用料が多い農産物で、残留農薬を指摘する声もある。生産量は少ないが、国内産に関しては安全、安心という観点からも需要が高いという▼日高地方の農産物といえば梅とミカン。日高川町でのコーヒーが軌道に乗れば、それに並ぶ特産品にも成り得る。「日高地方のコーヒーがおいしい」と、世界から注目される日が来ることを期待したい。(雄)