御坊市内の書店員さんがお勧め本を紹介してくれるコーナー、今週は炭家書店の女性店員Nさん(43)が、昨年「夜に星を放つ」で直木賞を受賞した窪美澄の近著を紹介してくれました。

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 人が殺されるより、大怪獣出現より、私は人と人がぶつかり合う〝人間ドラマ〟という展開が怖い。〝文芸の読書〟とは人間ドラマこそが醍醐味なのだろうけど、私はどうも心が落ち着かなくなる。

 この作品の主人公は47歳の美容皮膚科医の女性で、シングルマザー。14歳年下の男性と恋をするものの、クリニックの男性オーナーや息子、元夫との関係でいろいろと大変な〝人間ドラマ〟がやってくる。

 「でも、主人公の立場が絵空事みたいだから、他人事のように読めそう」と思いきや、物事の上手くいかないモゾモゾ感を味わい、事の顛末後に訪れる格言めいたシーンでは涙がこみあげてきました。

 ページをめくらせる文章は、さすが直木賞作家だなぁ…と思えた一冊です。