今まさに社会を席巻している「推しの子」。週刊ヤングジャンプに連載中の漫画で、コミックス発行部数は1200万部を突破、先月最終回を迎えたアニメも人気で、YOASOBIが歌うオープニング曲『アイドル』もSNSを中心に大バズリです。人気だけでなく物語も面白い。

 最近、応援したいアイドルや俳優への「推し活」がブームですが、推しの子はタイトルからして単なるアイドル応援物語ではありません。今回紹介するこの本は、推しの子の登場人物・物語やその背景などをさまざまな視点で考察する非公式の副読本。漫画出版社の集英社とは無関係です。

 推しの子の物語は、天性の最強アイドル「星野アイ」が双子を妊娠したところから始まります。アイはまだ16歳で人気絶頂。何とかこの秘密を守るべく、一人で双子を育て、周りに嘘をつきながらアイドル活動を続けます。ですが、事実を知った1人のファンに、弱冠20歳で殺されてしまいます。

 遺された双子が、物語の中心人物となる「アクア」と「ルビー」。2人は前世で面識があり、前世の記憶をもって転生しました。共にアイの大ファンで、生きがいだったのです。アクアはアイを殺した黒幕への復讐を誓い、ルビーはアイのような最強のアイドルを目指します。

 物語はこんなところですが、芸能界を舞台に渦巻く展開が今の時代を反映していると同時に、登場人物の細かな心情描写もこの作品の魅力。副読本では、例えばアイは橋本環奈がモデルだとか、武道館ライブまでたどり着くにはかなりの労力が必要など、現実世界に沿って解説されているのが妙に説得力があります(それでも完全虚構の世界で物語を楽しみたいという1アニメ視聴者の願望もある)。それにしても作者の取材力の凄さを感じます。

 双子の父親は誰なのか、ネットではさまざまな考察が飛び交っています。これからの展開も目が離せません。(鞘)