WBCで日本の優勝に大きく貢献した大谷翔平選手。シーズンが開幕しても二刀流は好調で、テレビで毎日のように活躍シーンの映像を見ながらも、その超人的な力強さとかっこよさはまるで飽きがこない。
同じように強くてかっこいいスポーツ選手といえば、ボクシングでアジア人初の主要4団体統一王者となった井上尚弥選手がいる。こちらも大谷選手同様、アニメの主人公を思わせるような規格外の強さを誇り、日本人として同じ世代を生きることの幸せを感じさせてくれる。
格闘技の中でも最も歴史が古く、ファンを熱狂させるボクシングは、試合前の会見や計量時から駆け引きが始まり、注目を集め、盛り上げようと、露骨に相手を挑発する選手がいる。ある程度はパフォーマンスと分かっていても、度を越せば面白さよりも不快さが大きくなる。
キックボクシングや新種の総合格闘技は、試合前の挑発行為もさらにエスカレートしており、もはや見る側もスポーツという感覚は薄れつつあるように感じる。そんななか、競技が違うとはいえ、先日、引退を表明したプロボクサーの村田諒太選手、井上選手らの相手をリスペクトした言動、試合ぶりのかっこよさが際立つ。
「あいつのせいでボクシングがどれほど傷ついたかわかりますか」。かつて、世界王者になった関西のやんちゃ系ボクサーがウケていたころ、学生時代にボクシング部だった大手の記者が本気で憤っていたのを思い出す。
スポーツに限らずどんな業界においても、1人のヒーローが全体を明るくするように、1人の無法者が与える影響は大きい。新年度に新たな仲間を迎えるにあたり、先輩・上司、訓示を述べるトップこそ自らの言行を振り返らねば。(静)