県は6日、2023年度の当初予算案と重点施策を発表した。一般会計の規模は6138億円で、前年度比1・6%(94億円)の増加。過去最大となった2021年度を18億円上回り、コロナ対策や産業振興、子育て支援などを盛り込んだ。一方で、新たに今後10年の財政状況を試算したところ、公債費負担の増加などで25年度に財政調整基金などが底をつくことが明らかとなり、「財政危機警報」を初めて発出する。

 歳入のうち県税、地方交付税、臨時財政対策債などの一般財源は3472億円で、前年度比0・9%(31億円)の増加。県税収入はアフターコロナの景気回復への期待感で増加する見込みだが、実質的な地方交付税(地方交付税・臨時財政対策債)が減少するため、一般財源は前年度と同水準となる。

 歳出は人件費、公債費などの義務的経費が2234億円で、前年度比0・3%(6億円)の増加となる。投資的経費は1036億円で前年度比0・6%(6億円)の増加。うち普通建設費補助は586億円で南紀・はまゆう支援学校再編整備などで前年度比2・9%(17億円)の増、普通建設単独は237億円で、伊都振興局の大規模改造完了などに伴い前年度比2・4%(6億円)の減。

 新政策では産業の振興や子どもを育む環境づくりを柱とし、県の未来につながる施策を推進。新規で紀州材生産力高度化支援2億円、妊娠・子育て等の相談及び経済的支援7億6062万円、ドローンによる施設点検の自動化・迅速化2717万円などを盛り込んでいる。

 今回、発出される財政危機警報は法的な効力などはなく、厳しい財政状況を広く県民に知ってもらうのが狙い。県の財政試算によると、23年度末見込みで209億円の残高がある財政調整基金と県債管理基金が25年度にゼロとなるうえ、県債残高が増加して公債費負担も拡大していくため、予算編成が困難となる見通し。新年度を「財政見直し元年」と位置づけ、一層有利な財源確保や事業の見直し、予算の賢いやりくりで乗り切る。