フィリピンに拠点を置き、日本の高齢者から金を騙し取っていた詐欺グループが追い詰められた。トップの指示役は廃ホテルに日本から「かけ子」を呼び寄せ、テクニックを教育のうえ、日本の高齢者宅に詐欺電話をかけさせていた。

 狙い通り高齢者を騙せれば、日本にいる「受け子」「出し子」に指示を与えて現金を受け取らせていたが、被害を防ぐための啓発の効果により、こうした手口ではなかなか騙せなくなったのだろう。昨年からは家に押し入って高齢者に暴行を加え、現金を奪う強盗集団へと変貌した。

 つぶれたホテルに怪しい日本人が何人も出入りしているのに、現地の警察は動かない。入管施設に拘束されている容疑者の中には、現地で起こした別の事件で起訴され、出国停止命令が出ている者がいる。日本の警察に逮捕されないための逃げ道だという。

 地獄の沙汰も金次第。日本人からすれば、まったく考えられないが、これはフィリピンに限った話ではない。米国でもヨーロッパの国々でも、警察が犯罪者に金で買収されて動かないというのは程度の差はあれ、当たり前にある話である。

 日本では深夜に若い女性が1人で街を歩けるし、何か困ったことやトラブルが起きたとき、誰でも110番すればすぐに警察が駆けつけ、対応してくれる。人権を尊重し、法を重んじるこんな素晴らしい国は日本をおいてほかにない。

 しかし、コロナとウクライナ危機で物価・エネルギーが高騰し、治安を守る国家の経済が揺らぎ始めた。串本のロケット打ち上げはいつになるのか。わが家も1月の電気料金請求額に妻が卒倒しかけたが、寒さとともに、世の中の体感温度はかつてなく下がっている。日本は持ちこたえられるか。 (静)