高台の猪之山公園に植えた桜と小山区長㊧ら

 花見の名所として親しまれていたみなべ町芝、猪之山(いのやま)公園の桜を復活させようと、地元芝崎地区の住民が園内で植樹活動を始めた。先月29日にはソメイヨシノの幼木25本を初めて植樹し、今後も数を増やす予定。本格的な花見が楽しめるのはまだ数十年先の話だが、「もう一度あの美しい眺めを取り戻したい」と、息の長い取り組みを続けていく。

 猪之山公園は地元集会所がある高台の斜面にあり、地元住民でつくる花の会が1976年、約200本のソメイヨシノを植樹。集会所近くの猪之山観音や道祖神が祭られた境内には花見台が設置され、春には美しい花とともに、町並みや南部湾が眺望できるスポットとして、40年以上にわたり人気となっていた。

 しかし、公園付近の斜面で数年前から小規模な落石が発生、ふもとには住宅があり、園内の町道が津波避難路にもなっていたことから、2020年夏、急傾斜地崩壊対策工事がスタート。ほとんどの桜が伐採され、樹木供養の法要も行われた。工事では擁壁やフェンスが設置され、全体完成は今年夏となるが、地元住民が園内の空きスペースや工事が終わった場所に桜を植えて、再び名所にしようと動き出した。1回目の植樹は県の緑の募金事業を活用し、区民25人が参加。高さ1・5㍍のソメイヨシノとともに、ツツジ75株も植えた。

 小山正人区長(54)は「住民の安全、安心を守るため、工事で桜が伐採されたのは仕方がない。できる限りの数を植えて、いろんな人が集まる場にしたいと思います。花の会は解散しましたが、その取り組みを私たちが引き継ぎます。次の世代にも受け継いでいっていただきたい」、地元の主婦らも「以前は桜のトンネルのようになった場所もあって本当にきれいでした。また、花見のイベントを開催できれば」と話していた。