照手姫と恋に落ちる小栗判官

 海南万葉の会主催、劇団たなべ座共催のミュージカル「Oguri~小栗判官ものがたり~」が22日、田辺市新屋敷町の紀南文化会館小ホールで上演された。田辺市龍神村在住の正木吉紀さん(45)が主演を務め、同じく龍神村在住の切り絵作家の蓑虫さん(61)も出演。約300人が来場、好評だった。

 県文化振興補助事業で、熊野古道各地に残る小栗判官伝説をもとにしたミュージカル。海南市の市民劇団KCMとたなべ座の団員が出演し、昨年は海南市で上演された。時は室町時代。文武両道に優れた若者小栗判官は陰謀で毒酒を飲まされ、「餓鬼阿弥」となる。妻の照手姫とも離れ離れとなり、不自由な体を土車に乗せ、人々の情けで少しずつ引いてもらっては湯峯の壺湯を目指す。やがて遊女となった照手姫と互いにそれとは知らず再会。照手は夫の無事を祈りながら土車を引く…。波乱万丈の物語に観客は一心に見入り、大きな拍手を送った。正木さんは、過酷な運命と懸命に戦う小栗判官を熱演。蓑虫さんは劇団たなべ座のメンバーで、女郎宿の主人長殿、照手姫の養父の息子鬼次の2役を演じた。

 正木さんは「大変充実感を感じる舞台で、やりきったという感じです。小栗伝説は宝塚歌劇やスーパー歌舞伎にもなるほど全国的に有名なのですが、地元では意外に知られていません。これがスタンダードな演目となり、熊野古道に残る小栗伝説を多くの方に知って頂ければと思います」と話している。