2023年、令和5年、癸卯(みずのと・う)の幕開けである。太平洋側の元日は晴天に恵まれることが多いという。今年の元日も和歌山県は冬晴れであった。この穏やかな晴天のように、平穏を取り戻す年であってほしいと願う◆毎年、大晦日の夜には素直に「NHK紅白歌合戦」を見ている。近年の視聴率はかつての80%超えに遠く及ばず今年も35・3%というが、個人的には楽しめた。加山雄三のラストステージ、27年ぶりの篠原涼子の「恋しさと切なさと心強さと」と小室哲哉のサプライズ出演などいろいろあるが、特筆すべきは個々のミュージシャンが結束した2つのユニットだ◆まずYOSHIKI、HYDEら4人による41~57歳の「ザ・ラスト・ロックスターズ」。鋭角的でパワフル、ヴィジュアルロックスターとしての正統的なパフォーマンスは圧巻で、同世代としてエールを送りたい気持ちになった。そして桑田佳祐が「同級生」4人に声をかけて実現した66~67歳の「時代遅れのロックンロールバンド」。派手な衣装もなく、自然体で力のこもった音を生み出しながらメッセージを歌い上げる。子どもたちの命がおびやかされる社会への怒り。国家間の武力抗争が止まない世界への怒り。シンプルだからこそ強く、メッセージは響く◆スタイルは対照的だが、どちらもあえてストレート過ぎる名を名乗り、自分達の流儀を堂々と世界にぶつける、やり方そのものに「ロック」を感じた。発信されるのは耳ざわりのいい音よりも、胸をざわつかせる何か。それは時代と向き合う覚悟かもしれない◆変わり続ける時代の中、積み重ねられる1年1年はすべて違う顔をしている。これからの1年はどういう顔を見せるか。どうかいいニュースを連れてくる年であってほしい。(里)