先日、日高高校で東日本大震災経験者の雁部那由多さんの講演を聞いた。雁部さんは小学5年生の時に東日本大震災に遭い、高校生の頃に体験を綴った本「16歳の語り部」を発行し、全国各地で語り部として活動している。
講演で印象的だったのは「黒い津波」だ。雁部さんの学校は海から2㌔ほど離れているが、学校の背後には川が流れている。津波襲来時、避難した学校の玄関にいた。海の方から津波が迫ってきたが、その津波はバケツで水を返したような感じで、ジワーと迫ってきた。その様子に津波は「たいしたことがない」と思ったが、その後、背後の川から溢れた津波が60㌢くらいの高さで襲ってきた。ちょうどその頃、周辺の人々が学校へ避難してきており、玄関に入る直前で波にのまれて流されていった。雁部さんはその様子をただただ見ているしかなく、小学生にとっては衝撃的だっただろう。
この時、雁部さんは流された人々より少し高いところにおり、つかむものがあったため助かったが、黒い水は重油とヘドロにまみれており、足首を掴まれたような感覚だったという。津波が引いた後、近くで流された人々の遺体が見つかった。人々は溺れただけでなく、流れてきた車に挟まれることもあったという。
過去にも東日本大震災の被災者の話を聞いたが、その人は「津波は炎とともにやってきた」と話していた。被災者のリアルな話を聞くたびに、津波は自分が思っているものと全く異なり、想像以上に恐ろしいものだと実感させられる。同時にその恐ろしさを目の前で体験した被災者の生の声は、写真や映像から伝わるもの以上に心に届き、防災への意識を改めさせられた。(城)


