10月のテーマは「文化祭」。アニメ化もされた人気の「古典部シリーズ」から、文化祭で巻き起こる事件を描いた一冊をご紹介します。

 「クドリャフカの順番」(米澤穂信著、角川文庫)

 岐阜県神山高校を舞台に、4人の高校生が活躍する古典部シリーズ。「氷菓」「愚者のエンドロール」など6作があります。京都アニメーションの制作で「氷菓」のタイトルでアニメ化されました。

 3作目の本書は全編文化祭が舞台となっています。

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 僕たちはもう校門をくぐっていた。振り返って確認する。校門には大きなゲートが立てられ、そのゲートは造花で鮮やかに彩られている。文化祭の来場者を歓迎するための、総務委員会苦心の作だ。校舎の窓から下がる垂れ幕、「第四十二回神山高校文化祭」の文字。

 さあ、祭の始まりだ。

 僕はよほど期待に満ちた顔つきをしていたのだろうか。校舎を見上げ恍惚としていた僕を、摩耶花が肘で突っついてきた。

「ふくちゃん。…文化祭だからって、あんまり変なことはしないでね。ふくちゃんは恥ずかしくなくっても、わたしが恥ずかしいんだから」

 ははは、信用がないなあ。

 ま、なにもしないわけがないけどね!