山間部を車で走っていると、道路沿いでサルを見かけることが珍しくない。サルの方も車が近づいても警戒することもなく、山の斜面でこちらをみているような素振りを見せる。これだけだと、かわいい動物と言えるかもしれないが、近年は山間部で農作物の被害が多発。日高地方でもサルの大きな群れが確認され、被害金額もひと昔前と比べて増加し、深刻な問題となっている▼農家の方も手をこまねいているのでなく、鳥獣害対策用の花火の活用、捕獲用の檻や防護柵の設置などで防戦しているが、「稲刈り前の稲や収穫前の野菜が食べらた。集団で来るので、被害も大きく、頭がいいのでたちが悪い」と半ばお手上げ状態の声も▼そんな中、ちょっとおもしろい対策をネットニュースで見つけた。ヤギを放し飼いにする方法だという。ヤギはサルに対して「凝視する」「近づく」という習性があるそうだ。滋賀県で行われた実験ではサルが出没すると、ヤギが反応してサルに接近。サルがヤギを避ける行動を見せた。その結果、接近距離が20㍍となると、サルの滞在時間が著しく減少するという結果が得られたという。実際に長野県では放牧地にヤギを放すと、サルの被害がなくなったという事例も紹介されている▼全国的に農村の集落から人が減り、高齢化も進む中、農地を守ることは課題の一つ。しかし、野山では野生動物が悠々自適に暮らし、人間が育てた農作物を虎視眈々と狙っている。特に被害が大きいサルに対して対策は必要で、ヤギの放し飼いで被害が軽減するのなら、試してみる価値があるかもしれない。作物を守れる上、野生動物にやさしいという利点もある。(雄)