歌手のおおたか静流さんが亡くなった。テレビCMで「花~すべての人の心に花を~」を聴いたのは32年前。その後、曲を創った喜納昌吉さんによる歌も聴いたが、晴れ晴れと突き抜けるようなおおたかさんの高音でうたわれたあの印象的なフレーズは、後々まで強く心に残った◆生でおおたかさんの歌声を聴く機会に恵まれたのは2014年。その年に休止されたかわべ天文台の復活を願い、かわべ天文公園プラネタリウムで「星めぐりを奏でる夕べ」が開かれたのだ。主催の星めぐりの会、東睦子さんの本紙連載コラムを担当していた関係で取材させて頂くことになり、以後コロナ前の2019年まで、イベント時には同天文公園に足を運んだ。おおたかさんは毎年出演され、一夜限りの天体望遠鏡復活の年には一般客と一緒になって見学もされていた◆ライブは降り注ぐ星の光をイメージしたライティングの中で行われた。いつも歌われるのは宮沢賢治作詞作曲「星めぐりの歌」。そのほか「きらきら星」「月がとっても青いから」など天文公園にふさわしい曲が歌われた。NHK―Eテレ「にほんごであそぼ」で歌われていた長崎県のわらべ歌「でんでらりゅうば」も披露され、優しい低音で歌われた「でんでらりゅうば、でてくるばってん、でんでられんけん、でーてこんけん」という面白い響きの歌詞とメロディーは、その後何日もふと口をついて出るほど印象に残った。今思い出しても、夢のように不思議な魅力に満ちた時間だった◆「星めぐりの歌」は、「小熊のひたいのうへは そらのめぐりのめあて」と北極星を示す言葉で締めくくられる。澄んだ歌声の記憶は、世界で続く理不尽な事態に向き合う指針になってくれる気がする。(里)