広島に原子爆弾が投下されて6日で77年となった。平和記念式典で、こども代表の小学6年生の2人が平和への誓いを読み上げた。「本当の強さとは、違いを認め、相手を受け入れること、思いやりの心を持ち、相手を理解しようとすること。本当の強さを持てば、戦争は起こらないはずです」と訴え、胸に響いた。世界ではロシアのウクライナ侵攻など争いが絶えない現実にもどかしさを感じるが、政治や軍事は別として、本当の平和とは本当の強さを持つことで実現できるということをあきらめずに追い求めていくべきだと、あらためて感じた。

 先日、広島市が育成に力を入れている被爆体験伝承者の吉川和子さんと話をする機会があった。被爆者の高齢化で被爆体験を話す人が少なくなる中、被爆体験証言者の体験や平和への思いを受け継ぎ、伝えるのが伝承者の役目。聞かせていただいたのは、当時8歳だった女性の体験談で、爆心地から2・8㌔で被爆し、避難した練兵場で無数の死体と並んで2日間横たわっていたという、経験者から聞き取らなければ語られない生々しい話を聞くことができた。戦争のむごさに触れ、平和の尊さをあらためてかみしめてみる。

 吉川さんによると、被爆を体験した証言者の多くが、自分だけが生き残ってしまったという罪悪感を抱えているという。それでも辛い体験を語るのは、二度と戦争が起こってほしくないという強い思いがあるから。これこそが本当の強さであろう。証言者、伝承者の方々の活動がどれだけ平和に貢献しているか、身に染みた。いまこそ、証言者、伝承者の方の話に耳を傾けるときではないか。(片)