自分のルーツを探す観光形態「ルーツ・ツーリズム」がアメリカやヨーロッパで成長産業になっているという。先日、美浜町役場で開かれた町議会の研修会で講師を務めた京都外国語大学グローバル観光学科の河上幸子准教授の講演で、恥ずかしながら初めて聞いた言葉だった。遺伝子検査サービスなど家族に関する資料を検索できるインターネットサービスが飛躍的に普及していることが背景にあるらしく、いまどきの新たな観光だと感心させられた。移民者の多い欧米が盛んだというのもうなずける。
 美浜町三尾地区はカナダ移民の多いまち。明治時代、工野儀兵衛が先駆者となり、多くの人がカナダへ渡った。大正時代には三尾はアメリカ村といわれるようになり、1940年にはカナダへ渡った三尾出身者は2000人以上になった。2世、3世と美浜町出身の日系人は5000人を超え、今も医師、弁護士、教師などさまざまな分野で活躍している。そんな日系人がルーツを探しに三尾に訪れることが数年前から増えたという。コロナ感染は今増える一方だが、アフターコロナ、ウィズコロナで将来的に外国人観光客を誘致できる可能性を大いに秘めている。
 河上准教授は三尾の移民データベースや、個別情報を検察できるデジタル・アーカイブの構築を、他の大学やカナダの研究者らで進めている。壮大なプロジェクトで、カナダからの観光客増が期待できる取り組みといえる。三尾では地域の歴史や魅力を発信できる語り部ジュニアの育成が行われている。小中学生や高校生が観光客を案内する、そんな未来が目に浮かぶ。地域の魅力は、そこに営む人にほかならない。(片)