仁坂吉伸知事が今月15日、今期限りの引退を表明した。4期15年と半年、公共調達制度の改革や紀伊半島大水害(2011年9月)での迅速な対応、紀の国わかやま国体(15年秋)の成功などを収め、ここ数年はコロナ対応で和歌山モデルと呼ばれる感染の封じ込めを実践。チョウチョの収集が趣味ということで、最初はちょっとのんびりした方かと思っていたが、熱心で真面目な仕事ぶりは多くの県民が認め、常にクリーンなイメージ。時には職員に厳しく、頑固なところもあったそうだが、県勢の発展と県民の幸せを心の底から願うからこその姿勢だろう。

 マンネリやおごりを招く多選はよくないが、個人的には仁坂知事にはもう少し頑張ってほしいと思っていた。現在、知事選挙には1区選出の衆議院議員の岸本周平さんが出馬表明しているが、仮に仁坂知事とガチンコ勝負していたらどっちが勝っていただろうか。岸本さんは1区で人気だが、2区や3区では知名度が低く、県全体でみれば仁坂さんが有利との見方もある。仁坂知事も多くの続投要望がある中で、それに応えられないことが断腸の思いだと表現。大阪の吉村洋文知事ならそんな状況になったら真っ向勝負してそうだが、仁坂知事はそうはしない。県政のリーダーを巡る対立が将来の和歌山発展にマイナスになる恐れがあるという考えからで、保身よりも県のことを第一に考える仁坂知事らしい決断。〝仁坂降ろし〟の動きにへそを曲げるでもなく、潔く身を引く姿勢には感服する。

 任期満了まで残り半年をしっかり全うしていただき、その後も奥さまの体調と相談しながら、県のよき顧問としてサポートをお願いしたい。(吉)