御坊文化財研究会(玉置芳男会長)の例会が11日、御坊市中央公民館で開かれ、日高地方の3つの遺跡の近年の発掘調査成果について学んだ。

 講師は公益財団法人県文化財センター埋蔵文化財課の濵﨑範子さん。日高町津久野・比井の天路山城(てんじやまじょう)跡、同町小浦の小浦Ⅰ遺跡・小浦Ⅱ遺跡、美浜町の吉原遺跡の3遺跡について解説した。

 天路山城跡は津久野と比井にまたがる遺跡で、中世から戦国時代にかけての山城跡。別名比井城とも呼ばれる。調査は2019年10月から12月にかけて初めて行われた。中世に紀中を治めた湯河氏の城郭としては、本城の亀山城跡に次ぐ規模を誇る遺跡。山城は本来生活の場ではなく砦(とりで)の役を果たすものだが、この城跡は長期滞在できるように整えた痕跡があり、湯河氏の拠点とする重要な山城とみられる。

 土居周辺に中世から戦国期のものとみられる五輪塔が2基以上存在することが知られており、今回の調査では周辺の聞き取りなどによって新たな五輪塔や板碑を確認した。城主に直接関連するものとみられ、「追加調査をしたいが、コロナで実施できていない」とした。

 おととし調査した吉原遺跡では、地域のリーダー的人物を葬ったとみられる弥生時代の方形周溝墓がこれまでに出土しており、新たな出土が期待されたが確認できず、須恵器等を埋納した遺構が確認された。小浦遺跡では河川のはんらんと思われる水が大量に流れた跡が確認でき、「当時の災害を物語っている」と話した。

天路山城跡で出土した五輪塔を紹介する濵﨑さん