塩路さんが撮影した船で被災者救助に当たる人ら

 御坊市薗の天性寺(津本芳生住職)に、1953年(昭和28)7月18日に発生した大水害(7・18水害)の現場を写した一枚の写真が残されている。撮影場所は大きな被害を受けた同寺の前の松原通り。浸水で川のような状態になった中、美浜町の漁師が漁船で住民を救助する様子が写されている。当時から助け合いの精神があったことが証明され、市文化財保護審議会の大谷春雄さんは「人々の温かさが伝わる」と話している。

 7月17日から翌18日朝にかけて梅雨前線による豪雨が県北部を襲い、山間部では24時間で500㍉以上の雨量を記録。全体の死者・行方不明者は1015人に上った。日高川流域も堤防が破損して浸水が相次ぎ、翌年の合併で御坊市となった旧6町村でも死者と行方不明者は合わせて220人。大規模な被害が発生する中、海抜が高く、比較的被害が少なかった美浜町域の旧松原村(浜ノ瀬、吉原)、和田村などの漁師が漁船を出して行き場をなくした御坊の住民らの救助活動に当たったほか、おにぎりなどを配ったという。


 今回の写真は松原通りで塩路写真館を営んでいた故塩路正夫さんが撮影。民家の2階付近まで浸水、川のようになった通りで、網船と呼ばれる長さ約10㍍の漁船に住民や漁師とみられる約10人が乗っており、船には「WK5―7117」の船体番号が記されている。地元の人によると、松原通り周辺は2㍍程度も浸水した場所があったという。


 写真はその後、塩路写真館近くの天性寺に寄贈。額に入れて同寺で展示されていたが、テレビ局の取材がきっかけで「写真に写っている人は誰なのか」などという話が持ち上がり、津本住職の母京子さんは「この写真に写っている方々のお名前や住所などについて知っている方がおられましたら、ご連絡ください」と呼びかけている。連絡先は同寺℡0738223451。


 今月末まで市役所ロビーで開催されている懐かしの写真展でコピーが展示されている。