今月1日から改正動物愛護法が施行され、ペットショップやブリーダーで販売される犬猫にはマイクロチップの装着が義務化される。これにより、誰のペットなのか身元がすぐに分かるようになる。最期まで飼う責任が問われている中、人間の身勝手な考えで飼育放棄されるペットがなくなることを望むばかりだ。

 このコロナ禍、癒やしを求めペットを飼い始めている人が増えているそうだが、いざ世話をするとなるとエサ代や治療費、トイレなどの消耗品費とお金も何かとかかってくる。それが負担となり、わずか数カ月で手放す例も少なくはない。それに、若いうちは動きにもハリがあって愛くるしいものの、年を取ってくると見た目も老い、歩き方もおぼつかなくなる。その弱々しい姿が受け入れられず、飼育放棄に至るケースもあるようだ。こんな人間のエゴに振り回され、ペットにとっては全く可哀想な話である。ペットは人間の欲望を満たすためのおもちゃではない。

 私も幼いころ猫を飼っていて、生まれた時から死ぬ間際までを見届けたことがある。死ぬ間際の猫は痩せ細り、骨がくっきりと浮き上がっていた。それでも私を見つけると一生懸命にやってきて、なでて欲しいと訴えてくる。なでると心臓の鼓動がすぐそこにあって、あとわずかの命を必死に灯しているのだと涙が出そうになったのと同時に、虚しさも感じたのを覚えている。最期は家から離れて、人目のつかないところでひっそりと息を引き取っていた。

 飼うということは、家族に迎え入れるということだ。あの猫は人に愛されて、とても幸せだったのだと思いたい。(鞘)