17日、印南町川又地区で目撃されたツキノワグマ(印南町役場提供)

 夏に向け、全国各地で野生のクマの目撃が相次いでいる中、印南町の真妻地区では17日から18日にかけ、計6回もの目撃情報が町に寄せられた。うち2回は住宅地や民家の近くに現れ、いずれも人が襲われるなどの被害はなかったが、町が住民らに警戒を呼びかけている。クマは体長約1・2㍍のツキノワグマとみられている。

 真妻地区の最初の目撃は17日午前8時ごろ、川又の真妻神社から北へ約300㍍離れた山の中。地元の人が車を運転していると、1頭のツキノワグマが山を歩いているのを目撃した。クマは車が近づく気配を察知してか、北西方向に逃げていったという。

 翌18日は一日に5回もクマが目撃された。午前6時5分ごろ、上洞の国道425号線沿いで近所の人が目撃。クマはすぐに西に逃走したが、わずか25分後の6時30ごろには、再び国道沿いの住宅地に現れた。7時15分ごろと7時30分ごろには、国道から約500㍍離れた林道で相次いで目撃され、さらに約8時間後の午後3時45分ごろには、この日4回目の目撃地点から北東へ山を越え、直線距離で約1㌔離れた川又地区でも目撃された。

 町は18日午前11時ごろ、真妻地区住民に注意を呼びかける行政放送を行った。現れたクマは2日間とも同じクマとみられており、いまのところ被害の報告はないという。

 クマはここ数年、全国的にも市街地への出没が増えている。一般的には、天候不良でエサとなるドングリやブナの実の減少が理由の一つとされている。

 県自然環境室によると、今年度に入っての県内のクマの目撃情報は、18日時点で田辺市や広川町などで9件。日高地方では今回の印南町、みなべ町の2件となっている。人里に下りてくるようになった要因を特定することは難しいが、今後、他府県の状況をふまえながら専門家を交えて検討するという。

 また、同室では山でクマに遭遇しないために、鈴やラジオを身につけて歩く、山に近い家では生ゴミの置き場所に注意するなどの対策を呼びかけており、ホームページでも啓発を行っている。