県の統合型リゾート(IR)区域整備計画案が県議会で否決され、白紙に戻った。計画案によると、各施設への総来場者数は1300万人(2030年度想定)、IR施設に対する投資金額4700億円、経済波及効果は建設時7100億円、運営時3100億円、雇用従業員数6200人。厳しい経済情勢の本県にとって夢のような話だった。県としては投資のリスクもなく、個人的には「チャレンジしてみればいい」と思っていたが、県議会の判断は違った。

 議案が否決された要因はやはり最大会派の自民党内でも賛否が割れたこと。自民党の反対票を投じた県議数人に話を聞いたが、「IR自体は賛成だが、事業者の資金計画が不確実」と口をそろえ、事業者自体への信頼性や、計画が失敗した場合に誘致を進めた県にかかる将来の責任にも問題を感じたという。ただ、知事も言うように未来永劫、県内でのIR誘致をあきらめる必要はないのだろうし、自民党県議もIR自体には賛成しているのだから、今後、国のIR整備2次募集があるのかどうか分からないが、再び県内での誘致話が出てくる可能性もある。カジノを含むIR自体に反対する人たちにとっては、まだ闘いは終わらないのかもしれない。

 一方、賛成18人、反対22人というわずか4票差での採決の裏には、何やら政治的な意味があるのではないかと勘繰ってしまう。知事肝いりの議案の否決は、県議会として事実上の不信任を突き付けた形になる場合もある。今回の否決と知事の不信任は全く別物と話す県議もいるが、秋に控えた知事選に向けてはきな臭い話も聞こえてくる。最大の推進剤を失った和歌山丸のかじ取りはいかに。(吉)