地震に関することで最近少し気になることがあった。ある式典のあいさつで「近い将来発生が懸念されている南海トラフの巨大地震」とおっしゃられた方がいて、その数日後にテレビの報道番組でも同じ言葉を聞いた。「いやそれは違うでしょ」と一人でツッコミを入れた。南海トラフの巨大地震は1000年に一度かそれよりも発生頻度が低いといわれ、過去に発生した記録がない地震。近い将来発生が懸念されているのは南海トラフ地震のはずだと。単なる言い間違いだったのか、筆者の聞き間違いだったかは別にして、誤った情報か、妥当な言葉なのか、自分なりに考えてみた。

 そもそも、南海トラフ地震という言葉自体、つい最近知った言葉だったことをまず反省したい。少し前までは南海地震、東南海地震、東海地震の3連動地震という言葉が盛んにいわれていた。今後30年以内に70~80%の確率で発生するといわれているのは南海地震という認識だったが、3つの地震とも震源域は南海トラフ上であり、最近では南海トラフ地震と呼ばれることが多い。南海トラフは震源域が複雑で、次に発生する地震の規模や強さが想定しにくいのが現状。高い確率で起こるといわれる次の南海トラフ地震が、巨大地震の可能性もあるということだ。

 ということは、筆者が冒頭でツッコミを入れた近い将来発生が懸念される南海トラフの巨大地震というのは、正しいとはいえないが、間違いだと言い切れない部分もある。安易に恐怖心を与えるのはよくないが、次に来る地震が巨大地震だと思って備え、逃げることは大切なことに間違いない。言葉にとらわれず、本質を発信し続けなければと反省したい。

(片)