人間の脳は忘れるように設計されているという。記憶に関する実験的研究の先駆者で忘却曲線を発見したドイツの心理学者のエビングハウス(1850~1909)によると、意味のないアルファベットを3個一組でたくさん覚えさせて、その記憶が忘れられていくスピードを調べた。その結果、わずか20分で42%も忘れ、1時間後には56%、9時間後には64%を忘れるというデータが得られたという。
しかし、災害から得た教訓は忘れてはならない。被災した直後は鮮明に頭にインプットされるが、時間が経ち、日常生活に戻ると、記憶は薄れがちになる。「天災は忘れた頃にやってくる」と言われるが、将来的に発生する災害に立ち向かうには過去の教訓を生かす必要がある。記憶を風化させず、将来へ伝えていく取り組みが重要といえる。
近年、県内で発生した災害を振り返ってみると、2011年の紀伊半島水害、大きな被害をもたらした18年の台風21号などがある。最近になっては昨年12月に御坊市で震度5の揺れを観測した地震、今月15日から16日にかけては南太平洋のトンガ付近の海底火山の噴火による津波が発生した。これらの災害から、停電すると普段の生活に大きな支障を来すことが身をもって体験できたし、日本から8000㌔も離れた海底火山の噴火で津波が来ることも分かった。
10日前の話になるが、阪神淡路大震災からちょうど27年となった。竹灯ろうで描かれた文字は教訓を忘れてはいけないという意味を込めた「忘」だった。新聞のコラムの話題としてはタイミング的に遅すぎるが、節目の時期に限らず繰り返し思い起こさなければ人間の記憶は薄れてしまう
(雄)


