写真=引退セレモニーであいさつ酒本選手

 御坊市出身のプロサッカー選手、J3鹿児島ユナイテッドFC所属のMF酒本憲幸選手(37)が今シーズン限りでの引退を表明し先月28日のホーム最終戦後に引退セレモニーが行われた。高校卒業後、セレッソ大阪で16年、鹿児島に移籍して3年のトータル19年間、ピッチを駆け抜けたレジェンド。本紙の取材には「楽しくサッカーができた」と笑顔で振り返り、すべての関係者に感謝を口にした。

 引退セレモニーは11月28日、J3第29節、今季ホーム最終戦となった鹿児島白波スタジアムでの長野パルセイロ戦後に行われた。御坊からも両親や友人が駆けつけ、かつてセレッソでともに戦った元日本代表の乾貴士、柿谷曜一朗選手らも酒本選手の顔入りTシャツで応援に訪れた。

 花束を手に酒本選手は「最高の仲間と最高のサポーター、応援して下さった皆さまが支えてくれたからこそ、ここまで続けてこられた。本当に感謝の気持ちでいっぱい。鹿児島はJ2、J1昇格、そしてタイトルが獲れるチームになると確信しているし、新しい僕の夢の一つになった」と感謝を込めてあいさつした。

 本紙の取材には、引退を決めたタイミングについて「J2に昇格させる覚悟を持ってすべてを出し切ろうと今シーズンに臨んだ。10月初旬、監督と話している中で自然と引退という言葉が出た。後ろ向きな決断ではなく、残りの試合に向けてチームの起爆剤にもなればという思いもあった」と最後まで仲間を鼓舞するスタンスを貫いた。

 現役の19年間を振り返り、「思い出は数えきれないが、セレッソ時代の2005年、この試合に勝てば優勝という最終節で引き分け、栄冠を逃したのが忘れられない。うれしいことより、悔しかったことの方が記憶に残っている」としながら、個人的には「これだけ長く続けられるとは思っていなかった。やり切れた」と晴れ晴れした表情。御坊キックマン時代、梅本昌照監督から「サッカーを楽しめ」と教えられたことを最後まで自分の中で大事にしてきたといい、「楽しくサッカーができた、幸せ者です」と笑顔いっぱい。

 16年間過ごしたセレッソについては「ピッチの内外で、選手としてだけではなく社会人としてマナーや常識などすべてを教えてもらった。自分を作ってくれた、親に近い存在」とかけがえのないチームと強調した。地元のファンには「温かい応援は本当に心強かった。小さい子どもたちに少しは夢を与えられたのならうれしい。長い間本当にありがとうございました」と感謝。今後については「まだ決まっていないが、これからもサッカーにたずさわり、セレッソや鹿児島の目標達成の力になれるようなことができれば」と新たな目標に向かって突き進んでいくとした。

 小学1年から地元の御坊キックマンでサッカーを始め、海南三中、初芝橋本を経て2003年にセレッソに入団。日高地方初のJリーガーとして活躍した。Jリーグではリーグ戦369試合、カップ戦やオープン戦を含めて435試合に出場。生粋のドリブラーとしてMFや攻撃に積極的に参加するDFとして通算22ゴールを決めた。U21日本代表にも選出された。御坊キックマンの梅本監督は「これからもサッカーにたずさわって、いい選手を育てていってほしい」と期待を込めた。